中国進出 成功企業レポート

30歳の若手総経理が

切り拓く中国市場

30歳の若手総経理が切り拓く中国市場 贝那商务咨询(上海)有限公司さま
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30歳の若手総経理が切り拓く中国市場 贝那商务咨询(上海)有限公司さま

 ベネフィット・ワンの初の海外拠点として、贝那商务咨询(上海)有限公司は2012年に上海で設立。

 コロナ禍以降の厳しい市場環境においても成長を続ける同社を、総経理としてマネジメントするのが手塚氏。着任時は28歳だったというから驚きだ。

 どのようなことに重点を置きながら取り組んでいるのか、また今後はどのような展望を描いているのか、手塚氏にお話を伺った。

(聞き手は上海埃和希企业管理咨询有限公司の梅村と陳)

福利厚生や報酬として歓迎されるポイント制度

――まず、事業内容についてお聞かせください。

 弊社は主に、ポイント制報酬制度を提供しています。顧客の担当者はポイントを付与し、付与された人は、弊社が運営するプラットフォームから、好きなモノやサービスと交換することができます。交換可能なサービスは約330万種類(SKU)を取り揃えています。この制度の顧客は企業のHR部門、ディーラーインセンティブ制度として代理店を通じて商品・サービスを提供する企業、そしてB2C事業を展開する企業の3つです。

 企業のHR部門には、従業員の福利厚生や表彰制度としてご利用いただいています。各企業は限られた予算の中でエンゲージメントを高めるために苦心しています。

 かつては中秋節には月餅を、端午節にはちまきを、などと実物の商品を配るのが一般的でした。しかし今はニーズが多様化しています。とは言え現金を渡すと給与と同じようにみなされ、「もらったらそれで終わり」と思われてしまう傾向があります。

 その一方で、ポイントは好きなものを選んでもらえるだけでなく、「あと何ポイントで〇〇と交換できる」などといったモチベーションに繋げることができます。また、従業員間でサンクスポイントとしてポイントを贈り合うことも可能なので、社内コミュニケーションの活性化やチームワークの強化にも活用していただけます。

――代理店に対する報酬は多くのメーカーが導入しています。企業における従業員と同様、代理店もポイントの方が喜ぶのでしょうか?

 代理店とお取引をされている企業様には、代理店・販売員表彰や期間限定キャンペーンなどの報酬としてご利用いただいています。やはり現金では給与と同じような印象で受け取られてしまい、制度自体がマンネリ化し、モチベーション向上に繋がりにくいので、ポイントは有効です。また、ポイント自体がインセンティブになるだけでなく、マイレージのように、一定期間の獲得ポイント数でランク付けもできるので、これもモチベーションになります。

 代理店インセンティブとして提供しているシステムでは販売管理も可能です。代理店は成約後に発票や販売証明等をカメラで撮影し、システム上にアップロードします。管理者が内容を確認してが承認すると代理店やその販売員にポイントが付与される仕組みです。現金インセンティブでは管理が難しく、不正の温床にもなりかねないので、このようなシステムは喜ばれています。

 3つ目の、エンドユーザー向けにサービスを提供している、B2C事業を展開する企業様からは、交換可能なサービスの幅広さが特にご好評をいただいています。自社でサービスを揃えたり、サプライヤーを選定・評価したりするのは手間がかかります。その部分を代行できるのは弊社の特長です。

 また、ラッキードローのようなゲーミフィケーションを組み合わせることで、顧客との関係を維持し、企業やサービスのロイヤル顧客になっていただくための施策を一緒に企画させていただきます。

自社ならではの強みで中国ローカル企業も開拓

――交換先のサービスとしては、どのようなものが人気なのでしょうか?

 コロナ前は電化製品が人気で、コロナ以降は日用品にシフトしていきました。今も日用品は引き続き人気がありますが、モノ消費よりもコト消費への交換も増えています。旅行やレジャー、出前などですね。

 また、弊社の強みの一つが、日本本社で展開している福利厚生のサービスが140万種類あることです。今後は中国で獲得したポイントも、日本でのサービスに交換ができるような企画を考えております。中国でも弊社と同様に、ポイント制報酬制度を提供しているローカル企業は存在しています。しかしながら弊社は、日系企業ならではの安心感や丁寧さに加え、ポイント交換先に弊社ならではのサービスを含めることで、今ではローカル企業などにも導入していただいています。

「サービスの流通創造」

――日系のサービス業がローカル企業の開拓を着実に進めている事例は珍しいように感じます。今後はどのような点を中心に事業を進める計画でしょうか?

 統計を見ると、福利厚生は拡充傾向にはないものの、大幅な削減もしないと思われます。昨今の経済状況を鑑みると、各企業は販売促進に予算をより割いていく傾向にあるので、代理店インセンティブ制度やエンドユーザー向けのサービス提供が拡大できると考えております。

 ビジネスモデルとしては、会費制も検討しています。中国では従来「使うか使わないか分からないものに対してお金を払わない」という考えが強いのですが、最近の動向を見ると会員制スーパーなどが人気を博しているなど波は来つつあるので、会費制も並行して展開していきたいと考えています。

 また、弊社グループ全体として「サービスの流通創造」を企業理念としています。モノは見れば購入前でも比較検討ができます。しかしサービスは使ってみないと良し悪しが分かりません。そこで、誰もがモノと同様に安心安全にサービスを選べるインフラの構築を目指すことを、ミッションとして掲げています。中国でも同じ構想があるので、そのためにまずは今のサービスを拡大し、ポイント使用データなどを蓄積するフェーズにあると考えています。

 将来的には、個人の趣味嗜好だけでなく、潜在的なニーズにあったサービスを提供できるプラットフォーマーになりたいです。ポイント使用データだけでなく、勤怠状況や有給取得状況、健康状態など様々な情報を掛け合わせて、各従業員に適切なサービスをレコメンドするようなシステムです。

若手駐在員への提言

――総経理は20代後半で赴任されました。以前中国での生活経験があったとは言え、かなり苦労されたのではないでしょうか?(手塚総経理は約4年北京での生活・留学経験あり)

 日本では営業経験が無く、会社のマネジメントどころかチームのマネジメントも無い状態から、いきなり現地責任者として赴任しました。しかも従業員は全員年上です。当初はかなり苦労しました。打開するために色んなHow toも試してみました。しかし、最終的には日頃のコミュニケーションが重要、というシンプルな考えに落ち着きました。

 日常的な声掛けをする、一緒にランチをとるなど、触れ合う機会を増やしました。会話の内容は仕事のことだけでなくプライベートなことも含めた方が良いと思います。ポイントは「自己開示」ですね。私はコミュニケーションが得意な方ではないです。ただ、自分を開示しないと相手も話してくれません。なので、自分自身をさらけ出すことが大切です。こういったコミュニケーションを行うのは、着任してから早ければ早いほど良いですね。

 よく言われるように、日本と中国は距離的には近い国ですが価値観は大きく異なります。自分の考えを一方的に主張しても、相手に受け入れられるとは限りません。実際の現場を知っているのは従業員なので、彼らが見たことや感じたこと、考えたことを私はキャッチするように意識しています。従業員はみんな、自分の意見をストレートに話してくれます。

――従業員の意見や自主性を尊重するのであれば、行動指針のようなものが重要ですね。

 その通りで、従業員が行動を選択できるように、判断基準、つまり企業理念やビジョンを明確に伝えなければなりません。会社として何をやっていきたいか、どのような世界観を持っているのかを共有しながら、「施策は一緒に考えよう」という姿勢が大切です。

 リーダーシップの種類としてはフォロワー型リーダーシップですね。私の考えを押し付けるわけでも、放任するわけでもない。一緒に考えようというスタンスで取り組んでいます。詰まるところ会社は人ですよね。人間関係が会社の業績に影響するといっても過言ではないと思います。

 営業においても同様にコミュニケーションが重要です。細かい点も密にコミュニケーションをとり、単にサービスを提供するだけでなく、課題を言語化してソリューションに落とし込むことを意識しています。

 ちなみに、中国語はできればある程度話せるほうが良いです。中国はスピードが速いので、翻訳の間も無い方がスムーズに進むと思っています。

――本日は貴重なお話をありがとうございました。

 

 手塚氏へのインタビューで強く印象に残ったのは2点。1つ目はサービス業としてローカル企業の開拓を着実に進めている珍しい事例ということだ。一般的に日系のサービス業はローカル企業に対して強みを打ち出しにくく、安価に販売する競合ローカル企業間の競争に割って入れずにいる。その点贝那商务咨询(上海)有限公司は、日本本社との連携で独自の強みを武器とし、開拓を続けている。また、「日系企業ならではの安心感」があり導入した顧客の期待を裏切らず、高い顧客満足を実現することで継続や紹介を得られていることも見逃せない。

 2つ目は、マネジメントに対する姿勢だ。個人的に、中国ではカリスマ型のリーダーが好まれる傾向があると感じているが、昨今増加傾向にある若手駐在員の方々にとっては、そのようなリーダーシップの発揮は難しい側面もある。一方、中国でも「発言しても良いのだ」「自分の意見を尊重してくれている」と感じてもらえると、自主性を引き出せる傾向も感じている。

 エイミー C. エドモンドソン教授が執筆した『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』をご存じの方も多いだろう。実はこの書籍、日本語版が出版される約1年前には中国語版『无畏的组织:构建心理安全空间以激发团队的创新、学习和成长』が世に出ている。カリスマ型リーダーによるトップダウン経営ではなく、多様性のある意見を尊重することが重視され始めている表れかもしれない。

 ビジョンは示しつつも、施策は従業員の考えを尊重する。意見を積極的に出してもらうためにも、日常的に自己開示してコミュニケーションを図る。特に若手駐在員の方々にとって、このようなスタンスが参考になれば幸いだ。

 

取材協力:贝那商务咨询(上海)有限公司

聞き手:上海埃和希企业管理咨询有限公司 梅村 達、陳 伯麒

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