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伝統産業の中国展開 
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伝統産業:「南部鉄瓶」の成功事例に学ぶ ~中国販売展開 成功の秘訣
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伝統産業:「南部鉄瓶」の成功事例に学ぶ ~中国販売展開 成功の秘訣

2010年上海で華々しく開催された万博、その総芸ホールエントランスロビーに高さ1.6メートル、重量210kgに及ぶ巨大な鉄瓶が出現した。

岩手県は今、特産品である「南部鉄瓶」の中国販売に力を入れている。

富裕層を中心に上海で人気を博している「南部鉄瓶」。

中国での販売について、岩手県商工労働観光部産業経済交流課 海外マーケットグループの畠山英司主査に話を伺った。

上海大可堂との提携

中国の日常生活に欠かせないプーアル茶。

「南部鉄瓶」は高温沸騰が可能なため、茶具として、そして芸術品としての素晴らしさが評価され、年前から富裕層 を中心に広がりを見せていた。

中国で「南部鉄瓶」を販売する上海大可堂は、中国茶の製造・販売会社であり、 平成19年、岩手県がバイヤーとして招聘して 以降、岩手県との経済交流が始まった。

この度「南部鉄瓶」を製造する及源鋳造株式会社とオリジナル鉄瓶2000個分の契約を締結する等、中国向けの販売・ 取引が加速している。

 

「南部鉄瓶」は、手造りの商品になると、価格帯が比較的安いもので2万円台から、高いものになると30万円台の商品もある など比較的高額な商品だが、上海をはじめ中国の富裕層を中心に人気を集めており、なかなか生産が追いついていない状況だという。

中国をはじめとする海外市 場で「南部鉄瓶」が広まることにより、年々減少する職人の育成にも期待がかかる。

岩手県大連経済事務所

県が中心となり県産品の中国市場開拓に本腰を入れ始めたのが平成17年、この年に岩手県大連経済事務所を開設した。

事務所の所長は岩手大学で学び、花巻温泉での勤務を経験した禹瑾(ゆうじん)氏。

今でこそ中国市場の大きな潜在力を見込み、進出を検討する企業は増加傾向にあるが、 当時は模倣を恐れ輸出に協力する企業が少なかった。

しかしながら岩手県は中国に幅広いネットワークと持つ禹瑾所長の存在もあり、積極的な中国市場開拓に着手した。

上海大可堂との契約も、禹瑾所長との繋がりがあったために実現した経緯がある。

中国販売展開のKSF

畠山主査の話を要約すると、「南部鉄瓶」が中国において受け入れられている要因は以下三点に整理できる。

 

第一に市場分析を丁寧に実施したこと である。

岩手県は数多くある県産品の中から中国に販売展開するアイテムを絞る中、オンリーワンの「南部鉄瓶」に行き着いた。

前述の通り、上海大可堂は岩手 県との接触を持つ前から「南部鉄瓶」を利用していた。

つまり、中国で既に利用されているアイテムそのもの、もしくは既存のアイテムに代替可能な高級品であ れば、比較的容易に中国展開が可能となる下地が存在すると言える。

その為には中国販売を検討している商品がどのようなターゲットにとってニーズがあるか、 市場分析が有効である。

 

二つ目に中国の市場、商文化、慣習に精通している企業や人物が間に入ることがポイントとなる。

岩手県の場合は、中国と日本の両国を深く理解している禹瑾大連経済事務所所長の存在が大きく、「南部鉄瓶」の取引開始は同所長の尽力によるところが多大である。

 

三つ目は中国市場向けのカスタマイズである。「南部鉄瓶」を製造する及源鋳造株式会社は、上海大可堂からの要望を受け注ぎ口の切り口を変えるなど、カスタマイズすることによりかなり細かいニーズに応えている。

この点は現地パートナーとの密接な連携が命綱となるであろう。

ハードルとなる商標登録

中国での販売展開の際にしばしば問題となる商標登録、「南部鉄器」も例外では無く、香港の全く関係の無い個人が「南部鐡器」として既に商標登録済みであった。

岩手県南部鉄器協同組合連合会では異議を申し立て、中国商標局はこれを受理し現在審査中だが、結論が出るまで2、3年はかかる見通しだ。

昨今紙面を賑わせているように、「今治タオル」や「有田焼」も中国で赤の他人に商標登録されていたため対策に追われている。

 

中国での販売展開を検討する企 業は、商標登録状況のチェックだけでも早期にされることをお勧めする。

商標登録の状況次第で、ブランド戦略を変えなければならないからである。

今後の可能性

台湾では日本の伝統工芸品が価値あるものとして人気が高い。

そして近年中国本土でも、富裕層の急速な増加に伴い同様の風潮の広がりが台湾以上の規模、ス ピードで見られる。

中国統計局によると現在高所得者層は6000万人にのぼり、5年前の2倍まで増加したとされており、また高付加価値商品を積極的に購買 することが指摘されている。

これは購入者が自身の購買欲を満たすためであるほか、高級品が贈答品として広く利用されていることに起因する。

そこで元来高級品である日本の伝統工芸品の付加価値を今以上に高めるため効果的な手法として考えられるのが、伝統工芸品業者同士のコラボレーションによる更なる高級品化である。

「南部鉄瓶」は赤を基調に金箔をあしらった桐箱を入れ物とし、更に原産地・品質証明書を添えた商品を、台湾を足がかりに中国本土まで視野に販売を検討している。

品質、保証、イメージ全ての面で高級品としての条件を満たし、目の肥えた中国富裕層のニーズに応えた格好だ。

商 品の更なる高級品化と共に注視すべき点として再度強調したいのが、前述の中国市場向けカスタマイズである。

 

中国の生活習慣に適応するよう商品をアレンジす ることにより、実用面でも価値は高まり、中国市場へのフィット性が増す。

日本の伝統工芸品が中国で広く長く受け入れられるためには、この柔軟性こそが大き なポイントとなるであろう。

日本各地の伝統工芸品が中国市場において、ニーズを強力に掴みながら販売を展開することにより、その素晴らしさが海を越えて中国にも広まり、更には日本の地方経済が活性化することを期待したい。

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