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教育:株式会社 京進 様の成功事例に学ぶ ~中国進出の成功要因とは
日系自動車関連企業が早くから進出している広州近くの都市佛山。近年でもその勢いは衰えることが無く、日系自動車メーカーと取引している日本の部品メーカーが引き続き進出している。
その中心地に中国人向け日本語教室がある。総生徒数約600名の人気校であるこの学校は、日本で進学塾を展開する「株式会社 京進」の中国現地法人が運営している。
外国企業が教育施設の運営をしにくい中国で、営業許可の取得から経営全てを担ってきた同社日本語教育事業部部長、藤井孝史氏に話を伺った。
現地ニーズへの対応
-進出経緯を教えてください-
「京進の経営理念には『日本と世界の教育・文化の向上』を掲げています。実際、1988年にはドイツへ進出、リーマンショックなど数々の経営環境の変化に適応する経験を培ってきました。
中国への進出は、多数の日系企業進出により拡大している『進学ニーズ』と『日本語教育ニーズ』に応えるということで着手しました。『進学ニーズ』は 日本人駐在員子女が帰国後に中高大学校へ進学するためのもので、『日本語教育ニーズ」は日本企業の現地中国人社員に会社負担で日本語を教育するものです。
第一歩として2006年、『進学ニーズ』に応えるために、広州市で日本人駐在員子女向けの学習塾を開校しました。その学習塾を視察した佛山の幹部に請われて、佛山で会社設立、街の中心地区に中国人向け日本語学校を開校しました。
さまざまな苦労を粘り強い対応で乗り切ったことで、現地法人は無事営業許可を得ることができました。」
現在の中国では、海外企業が「教育訓練」の営業を行うことは容易ではない。
それを実現したのは、藤井氏が「行政と強いパイプを持つと自称する者」等と安易に提携せず、着実に本来のビジネスで実績を積み重ね、機を得た対応をし、各政府機関へ繰り返し粘り強い対応をし続けるという基本に忠実な対応にあったのであろう。
マネできないノウハウ
-開校後の成功要因を教えてください-
「京進が日本における37年間の経営で培った『循環発展学習法』を中国でも採用しています。
このノウハウには、単に「教える」だけでなく、小テストなどでその知識が定着するような様々な工夫が盛り込まれています。このように『教える側が工夫している』学習法は、中国、特に佛山地区ではまだまだ珍しいようで、中国人受講生に高い評価を得ることができました。
また、学ぶ『楽しさ』についてもこだわりを持っており、言葉に限定せずに日本語の文化も積極的に発信するようにしています。中でも教室の待合ブース での日本の漫画展示や日本食体験イベントは非常に好評で、日本への理解促進はもちろん、学習意欲喚起にも大いに役立っています。
これら受講者達に好評の施策を実現できたのは、日本人スタッフが積極的に現場に関わってきたことも大きな要因だと思います。中国人スタッフと話し合 いを繰り返し、各種イベントを共に運営することで、中国人スタッフにも信頼され、中国人受講生にも評価されるようになってきました。」
潜在ニーズを顕在ニーズに
-特に苦労されたことを教えてください-
「もちろん、全てが順調に進んできたわけではありません。
特に、一般の中国人に対する日本語教育は立ち上げに時間がかかりました。その理由は香港に近いという地理的要因に有り、外国語取得となると、英語の次はフランス語やドイツ語が一般的なんだそうです。
しかし追い風もありました。日本企業の増加とアニメや漫画による日本文化の浸透です。そこで私たちは、現地のショッピングセンター店頭での模擬教室 や日本文化を活用したイベントを繰り返し行いました。このような地道な取り組みを1年、2年と重ねることで徐々に認知を得て、受講生増につながりました。
ショッピングセンターの店頭イベントは、化粧品や自動車など新商品販売が一般的です。そのような中で、『日本語教室』のイベントは珍しいようで、来店客だけでなくショッピングセンター側にも評価を得て、ショッピングセンター内で出張授業もさせてもらえるようになりました。
また、国民性への理解にも時間がかかりました。
新規の受講生に来て頂くために『生徒さんにお友達を紹介してもらう』というのは日本では一般的なのですが、中国では『ライバルを増やすことになる』という理由で受け入れられませんでした。」
地方都市で「日本を好きになってもらう活動」を推進する
-今後はどのように中国で展開されますか-
「様々な苦労を通して中国人の気質もかなり学んできたので、他都市での立ち上げはより円滑にできると思います。
そこで我々の事業は、『中国の皆さんに日本を好きになってもらう活動』と位置づけ、日本の情報が少ない地方都市へ積極的に展開したいと思っています。」
中国進出を考える日本企業へのアドバイス
中国各地から教室開校の問い合わせに奔走する藤井氏に、今から中国進出を考える日本企業へのアドバイスを伺ったところ、以下二つを頂いた。
① 守るべきことと、現地に合わせることを明確に認識する
② 日本本社に「NO」を言うことも仕事
両者とも中国で成功した方からよく頂く言葉である。
京進では教育ノウハウは守り、マーケティングは柔軟に現地に合わせて取り組んだことで成功を収めている。ただこの区分は実際にビジネスを初めてみる と想像以上に難しく、多くの企業が自社の本来の良ささえも見失ってしまう。結果、単なる外国資本の中国企業になってしまい、自ら競争力を弱めてしまうこと も多い。
この区分を見極めるのは、現地の責任者として派遣された日本人の使命であろう。現地に入り、現地スタッフと積極的に意見を交わし、自らの判断で日本本社に「YES」「NO」が言えなければならない。
この使命に藤井氏は正面から向き合い、挑み続けてきたのであろう。本業に対する理解と情熱はもちろん、現地での情報から責任を持って判断することの大切さを藤井氏の姿勢から大いに学びたい。
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