中国進出 成功企業レポート

中国人幹部育成で”提案力”に高い評価

IT:真のニーズを解決する艾杰(上海)通信技術有限公司
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IT:真のニーズを解決する艾杰(上海)通信技術有限公司

【お客様のニーズに対応するために】

株式会社IIJは、日本で最初にインターネットの商用サービスを開始した会社であり、今では東証1部と米国NASDAQに株式公開し、世界9ヶ国に展開している。

 

その中国法人である艾杰(上海)通信技術有限公司は、2012年に上海で設立、クラウドサービスなどITコンサルティングにおける「高い提案力」によって日系企業からも高評価を得ている。

 

高評価の実現に至った人材育成の取り組みを、副総経理の山口貴司氏に伺った。(聞き手は弊社総経理の河野)

【お客様のニーズに対応するために】

-中国人幹部育成の打ち合わせ時、「中国人社員が、お互いの守備範囲の間に落ちるボールを自ら取りに行けるようにしたい」と言われたのが印象的です。

 

 当社には、お客様企業のニーズに対応するために、IT製品をそのまま販売する仕事と、IT製品を活用して企業課題を解決する仕事の2種類があります。

 いずれの部署も、優秀な中国人社員たちが集まってきてくれてますが、部署間で情報連携ができず、自己能力のみで解決策を見出そうとする為、適切なソリューションをお客様に提案できず、案件を受注できない事が多くありました。

 また、受注できたお客様でも、部署間で連携すればより良いITシステムを提供できる余地がありました。それを見逃したくはありません。

 そこで、主要メンバーとなる課長達を育成する教育研修に着手しました。

【お客様が欲しいのはシステムでは無い】

-研修内容設計時には、思考法を進化させるご要望をいただきました-

 

 教育研修の内容にロジカルシンキングなどの思考法を依頼したのは、彼らにお客様の真のニーズにたどり着けるようになってもらうためです。

 お客様への訪問時、ロジカルシンキングで適切に思考を掘り下げられるようになれば、お客様の真のニーズが判ってきます。

 例えば、クラウドシステムの導入を相談されたお客様がいたとします。欲しいのではクラウドシステムではありません。ヒアリングして掘り下げて考えると、欲しいのは「安全に保存する領域」であり、「データ共有すること」であり、「社員間のコミュニケーションを活発にすること」とが確認できます。そうなると、当社が提供すべきなのは、クラウドシステムではなく、社員間のコミュニケーションツールとなります。

 もし提供すべきものが、当社のサービスメニューに無ければ、他社から仕入れても構いません。この時の当社の利益は少ないかもしれませんが、常に真のニーズに対応する良いソリューションを提供していけば、お客様との信頼関係はより強固になり、次回もご依頼頂けると思っています。

【真のニーズと事実を把握する】

 中国でこのようなことを言うと理想論に聞こえるかもしれませんが、当社では実例が多数あります。

 ある日系製造業のお客様だったのですが、「ネットワーク通信速度が遅く、ITシステムが円滑に動かない」と相談を受けました。

 一般的なITコンサルティングではネットワークの帯域を増やす提案をすると思うのですが、当社では本当にネットワークの帯域が問題なのかを調査し、提案することとしました。

 調査の結果、中国各所に点在している中のネットワークルーターの一つがロースペックとなっており、そこを経由した時にネットワーク速度が遅くなっていることが判りました。

 そこで、ルーター交換により、無事に問題を解決することができました。

 さらに、この調査のおかげで、「従業員が昼休みに動画ダウンロードしているから速度が遅くなる」「セキュリティ面で強化すべき点がある」など、ルーターのスペック以外にも問題点が見つかり、セキュリティ全般改善のプロジェクトとして取り組ませていただくこととなりました。

 

 このような実例を継続的に創出するためには、単に思考法だけ身につければ良い訳ではありません。自社商品の知識は当然のこと、IT全般や他社商品の知識を収集しつつ、お客様の業界についても学び続けなければなりません。

 そんな努力し続ける必要性と価値、その喜びも彼らには感じてもらいたいと思っています。

【中国人課長達がルールを決めると浸透する】

-教育研修以外の人材育成の取り組みを教えてください-

 

 課長達とのランチミーティングを1~2回/月、開催しています。

 この場では毎回、指名された1名が課題を考えてきて発表します。

 例えば「良い人材を採用するためにはどうしたら良いか」とか、「良い人材を育成するにはどうしたら良いか」「社内のコミュニケーションを良くするにはどうしたら良いか」などです。

 

 この課題をテーマに、自由に議論をします。ある程度議論がまとまれば、次回に解決策のプレゼンをすることになります。

 解決策のプレゼンは、他課長や経営陣に対して直接行い、必要と判断されれば即決され、実行に移されます。

 例えば、初回の課題は「遅刻する社員をどうするか」でした。解決策として「毎月、1回までは許して2回目以降は罰金」など日本人から考えると甘いと思うものもあり、私としてはもっと厳しい罰を設定すべきではないかと思っていました。

 

 ただこれは、罰則を運用する必要が無いほどに、あっさりと解決しました。

 議論を通して、課長達に遅刻が良くないことだとの自覚が浸透し、それが一般社員達に伝わったのです。結果、遅刻は激減したのです。

 このように、「意見を交わし」「自分たちでルールを考え」「決める」ということが、中国人社員の自主性を高め、皆がルールを守ることにつながるのだろうと思います。 

 その他、会社として褒めることも意識しています。

 新規顧客開拓を重点テーマとした6ヶ月間は、新しくプロジェクトが開始される度に、総経理から感謝状と金一封を出しました。

 対象となった中国人社員と上司は、非常に喜んでいました。やる気になってくれたと思います。

 

このように、社員にとって良いと思えることは積極的に取り組んでいます。「営業職なのだから新規開拓は当然」と言えなくも無いですが、そんな考え方では何も良い事は生じませんので。

【セキュリティ強化は、中国では特に重要】

-今後の重点方針を教えてください-

 

 2017年6月1日から、中国でもサーバーセキュリティーに関する法律が施行されました。

 これは、企業が保有するネットワークなどのインフラに対して、適切なセキュリティを要求するものです。重要情報の識別、社内でのアクセスログの6ヶ月間の保管、適正頻度のデータバックアップによる消失防止などが求められています。

 

 対象は27業種(※最下部参照)既にネットワークを提供している会社で摘発されている事案がありますが、まだまだ不明点も多いです。

 いたずらに怯える必要はありませんが、多拠点で重要情報を扱い、ネットワーク運用をしている会社は、法の適用に関わらずセキュリティの見直しをお勧めします。

 実際、当社でも「ランサムウェア」という人質型ウィルスの対応で相談が増えています。日系企業でも被害事例がありますので、不安がある企業様は是非一度ご相談ください。

※ご相談連絡先: gschina-dl@iijglobal.co.jp

【中国を好きになって下さい】

-日系企業へのアドバイスをお願いします-

 

 中国を好きになって下さい。

 中国人や中国文化が嫌いだと、中国から嫌われます。

 一方、好きになると、好きになってもらえます。そうすると、公私共に上手くいくことが増えます。

好きになるためには、偏見を持たず、自ら色んな場所や人に飛び込むことです。嫌な思いをすることも、上手くいかないこともあるかもしれません。でも、そのようなことを繰り返しながら、自分が好きになることを探し続けてくれれば良いと思います。

 そうすれば、中国人と深い信頼関係が築けます。

 中国では「幇(ぱん)」という、同郷や同族による深い信頼関係と強い結束を持つ考え方があります。この仲間は会社との関係よりも強いため、会社を裏切って幇の仲間に情報を提供したりします。これは、いざという時に会社は助けてくれないが、幇の仲間は助けてくれるという信頼感があるからです。

 

 このようなものに匹敵するような、深い信頼関係を持てる中国人の仲間を作って下さい。

 そうすれば、中国での仕事やプライベートは、望ましい結果につながりやすくなると思いますよ。

 

 

-貴重なお話、ありがとうございました-

取材協力:艾杰(上海)通信技術有限公司

聞き手:上海埃和希企业管理咨询有限公司 河野隆

 

※サーバーセキュリティー法の対象27業種は、石油天然ガス、石炭、石油科学、電力通信、電子情報、鉄鋼、非鉄金属、大型設備製造、化学工業、国防軍事、その他工業分野、地理情報、民用各施設、交通運輸、郵便宅配、水利、人口健康、金融、信用調査、食品薬品、統計、気象、環境保護、放送テレビ、海洋環境、電子ビジネス、その他

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