中国進出 成功企業レポート

中国人の人材育成 
企業理念浸透のポイント

小売: JINSに学ぶ企業理念浸透のポイント
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  3. 中国人の人材育成/企業理念浸透のポイント~小売:JINSさま

小売: JINSに学ぶ企業理念浸透のポイント

 6年間で22都市約100店舗。競合がひしめく中、スピード感のある拡大を推し進めているのがJINSだ。特筆すべきはスピードと人材育成の両方を高いレベルで実現している点である。

 一般的にスピードを追求するとサービスの維持向上がおざなりになりがちだが、JINSでは両立を果たしている。特にJINSでは商品説明だけでなく検眼やフィッティングなどが必要な事から、多くの小売店と比べ接客時間が長くなるが、それでも顧客満足度は高い。

 

 どのような人材育成に取り組んでいるのか?1号店の立ち上げから中国での展開に取り組まれている、営業部部長の佐藤氏、人事総務部部長の西村氏、、教育部部長の池本氏にお話を伺った。

ロールプレイングを活用した接客スキル向上

――中国の小売店では単なる商品知識のプレゼンに終始してしまう販売員がほとんどのように感じています。その一方、JINSでは高いレベルの接客を身につけているスタッフが多くいらっしゃいます。採用、育成などの面から秘訣を教えてください。

 教育の方が重要です。中国での社内講師が5名いて、技術的な研修からサービス面の研修まで行っています。その中でもロールプレイングを重視し育成手法として定着させています。

 

 特に入社直後の慣れていないスタッフにとって、ロールプレイングはハードルが高いものです。そこで四段階のレベルに分けたロールプレイングを実施しています。

 ①まずはお客様の反応を考慮せずに行う商品説明、②次に押し売りではなく双方向コミュニケーションの大切さを意識してもらうための基礎として、お客様に一言声をかけた後一旦離れる手法を自然に行うロールプレイング、③お客様の属性や商品用途に合わせた商品説明、④目的買いではないお客様に対する接客、という段階です。

 漫然と行うだけでなく、スタッフ間でフィードバックをしっかりと行う事も大切ですね。

 成果発表の場として、トーナメント形式のコンテストをスタートしました。まだ導入期なので前回は理念に関するスピーチコンテストのようなものでしたが、今回は接客ロールプレイングのコンテストを実施しました。各店舗で代表を決めてまずはブロック予選、そこでの代表者が集い全体の決勝戦を行います。

 優勝者は日本研修に参加してもらいます。これはもちろん接客コンテストに対する意欲向上を狙ったものですが、優秀な人材はドンドン日本に行って良いサービスに触れてもらいたいという考えもあります。

 

 この他、店長会議を定期的に開催しているのですが、そのタイミングに合わせて日本本社からトレーナーを呼び、研修やロールプレイングの手法もレベルアップを続けています。

 とは言え、日本のサービスに比べるとまだまだ改善すべき点は多いです。

理念の行動への落とし込み

――特にブロックマネージャーやSV、店長などの管理者層からロイヤリティの高さを感じます。JINSの「Magnify Life」というビジョンが浸透しているのかと思われます。理念教育に頭を悩ませている企業が多くいますが、JINSでのポイントを教えてください。

 ブロックマネージャーは中国事業のスタート期から頑張ってくれている人材です。彼らが会社を引っ張っていこうという意識を強く持っているので、理念浸透の原動力になっています。

 理念教育は入社時研修から力を入れています。この時重要なのはケーススタディです。理念を具現化した行動レベルまで落とし込んで初めて、理念が意味する事を深く理解してもらえます。

 

 入社後の仕組みとしてはスタッフ全員に配布している手帳があります。この冒頭ページに理念を掲載しているのですが、手帳に毎日日報を書くようにしているので、自然と理念が視線に入ります。スタッフが書いた日報は、店長が毎日確認しフィードバックしています。

 日報を提出するだけでは不十分でフィードバックが重要です。もちろん日報が無くともスタッフ全員が自主的にコミュニケーションを取れば良いのですが、それは理想論的すぎるので、まずは日報を義務付ける事でコミュニケーションや業務上の気付きが生まれるようにしています。優秀なスタッフや店長の発掘にも繋がっているので効果的です。

 店長によって定着度にはまだ差異はありますが、しっかりと取り組んでいる店舗はコミュニケーションも円滑で、伸びが早いです。

 

 この他、店長会議の際にも総経理が理念を強調し継続的に浸透を図っています。

明確で透明な評価制度

――評価制度で工夫されている点や、モチベーションを高める仕組みを、差し支えない範囲でご説明ください。

 

 MBO(目標管理制度)を導入しています。半年に一度、定量・定性の評価を行っています。定量は業績やスキルで、定性は理念の実行度合いに対する自己評価と上長評価がメインです。

 中国では曖昧さはなかなか受け入れられないので、ポジションごとの定量・定性のウェイトや評価基準は明確に定めています。MBOでつまずきやすい目標設定の指導の仕方についても、店長研修などでしっかりと教え理解してもらっています。

 

 この他、月に一度SVが担当店舗の店長と面談を行い、細かい状況の確認を行っています。SVからのフィードバックはブロックマネージャーが対応しています。

 給与面に関しては平均レベルです。スタッフからの給与交渉はありますが、理由も無く受け入れる事はしません。昇給するにしても理由が必要です。中国では社員間で給与事情が筒抜けなので、昇給した事が他に伝わっても良いように昇給基準を明確にしています。

 また、三か月に一度昇進のチャンスがありモチベーションに繋がるようにしています。昇進試験は実技と筆記の両方です。副店長・店長の前段階として初級・中級・上級スタッフという階級を設ける事で、スタッフの意欲を喚起しています。

 担当店舗内の合格率はSVの評価項目の一つでもあるので、彼らのモチベーション向上にも繋がっています。

 

 階級制度は最初から五段階を設けたわけではありません。当初の階級は副店長と店長のみでした。徐々に拡大するにあたって、評価のしやすさを考え段階的に増やしていきました。

理念に共鳴するスタッフと共に成長する

――「中国では時間とお金をかけて人材育成しても、すぐに転職してしまう」という声をよく聞きます。そのような企業にアドバイスをお願いします。

 我々のスタンスとして、「JINSの理念に合わない人は他に行って頂いても結構」と考えています。決して無理矢理引き留めるような事はしません。

 JINSではスタッフを含めた離職率は決して低くありませんが、店長以上となると5%以下に収まっています。給与も特別高いわけではありませんが、この数字を実現できています。

 

 彼らがずっと頑張ってくれている理由は会社に対するロイヤリティなのだと思います。JINSの理念に共鳴し日々努力している人材をいかに発掘し成長させてあげるか、我々は注力すべきだと考えています。

 理念が基本かつ最重要であり、それを浸透させるための仕組みが大切です。

 会社の成長性もポイントです。成長性を感じて頑張ってくれているので、我々としては更に会社を発展させていく必要があると考えています。今年も30店舗開店の予定です。

 

――本日は貴重なお話をありがとうございました。

 

取材協力:睛姿(上海)企業管理有限公司
聞き手:上海埃和希企业管理咨询有限公司 梅村 達

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